かみ合わせの悪さによって引き起こされるトラブル
顎関節症や頭痛、肩こりを引き起こす
かみ合わせの悪さは、歯並びの悪さと混同されがちです。
しかし、単純に歯並びが乱れている為にかみ合わせの不正が起こるというケースは実は少なく、骨格の悪さが原因となっている例が多数見受けられます。
骨格が悪いということは、その方の持って生まれた骨格に問題があることも勿論ありますが、多くの場合で普段の生活での習慣が骨格の悪さに繋がっています。
何らかの理由で顎の筋肉の使い方に無理が生じていると、顎関節症になりやすくなります。さらに、無理して筋肉を動かしていることによって肩こりや頭痛に発展する可能性も高くなります。
むし歯や歯周病になりやすい
良いかみ合わせが維持できていれば、舌は口の中で相応しい場所に収まっています。
ところがかみ合わせに問題があると、常に舌が不安定な状態にあり、口の中で歯を舌で突付いて歯を揺らしてしまうため、歯周病を引き起こす一つの要因となります。
また、まっすぐ噛めない為に歯に斜めに力がかかり、倒れやすくなることも歯周病を発症する可能性を高めます。
なお口内に歯周病菌が存在することによって歯周病になるわけですが、菌が多いということは歯磨きが行き届いていないということを意味しており、さらに歯が揺れている状態だとだんだん歯周ポケットが深くなって、その部分に歯垢が溜まりやすくなるので、歯周病だけでなくむし歯にもなりやすい環境といえます。
かみ合わせが良くないことによって口内環境が悪化し、さまざまな悪い影響が出てきます。
美容面での影響
女性の方が気にされる美容面での歯に関する悩みとしては、「ガタガタの歯並びで見た目が悪いこと」が一番に挙げられますが、その次によく耳にする悩みが「笑った時に歯ぐきが見える」ということです。
ガミースマイルとも呼ばれる、笑った時に歯ぐきがむき出しになってしまう方の歯列を見ると、まっすぐ一列に並んでいて一見問題がないようでも、歯列全体が下におりていて、笑った時に歯ぐきの部分まで口から覗いてしまいます。
このような状態もやはりかみ合わせの悪さが原因となります。
歯並びという単独の視点で見るのではなく、かみ合わせを含めて口内全体をトータルで見ることで、大きな口を開けてもコンプレックスを感じることのない自然な笑顔に導くことが可能になります。
かみ合わせが悪いまま放置するリスク
かみ合わせが合っていないまま何も対処しないでいると、歯垢が溜まりやすくむし歯や歯周病になりやすかったり、口内の問題だけでなく頭痛や肩こりにも繋がったりする状態が自然に改善することはなく、悪い方向へとどんどん進んでいってしまいます。
それ以外にも、高齢の方に起こりやすい誤嚥性肺炎(食道に入るはずの食べ物や唾液が誤って気管に入り、唾液などに含まれた細菌によって引き起こされる肺炎)は、舌が上にあがっていないことで発症リスクが高まります。
歯並びやかみ合わせが悪い方は舌が下がりやすい傾向がある為、将来の誤嚥性肺炎の予備軍ともいえます。
かみ合わせを良い状態に保つことは、毎日を健やかに過ごし、何歳になってもその健康を維持するために不可欠です。
なお、国が定めた生まれつきの先天性疾患がある方が歯列矯正やかみ合わせの治療を行う際には、健康保険が適用されます。
そのような方の場合は、保険が効くということでハードルが下がって治療を始めやすくなるようです。
矯正歯科治療を受けたのにかみ合わせが合わない時には
矯正治療において、特に抜歯を伴う矯正では、歯と歯の隙間を埋めていく時に前歯のかみ合わせが深くなりやすいため、できるだけかみ合わせを浅い状態で維持しながら歯を動かしていく必要があります。
しかし矯正治療の経験が浅い医師が単純に整った並びだけを考えた治療を行うと、かみ合わせが深くなる例が起こり得ます。
当院ではそのような方のかみ合わせの検査と治療も承っていますので、他院で受けた矯正治療でかみ合わせに違和感を感じる時には一度ご相談ください。
歯が失われた時にはできるだけ早い対処を
歯が1本失われると、抜けた歯の部分に両隣の歯が倒れ込むように寄ってきます。
さらに、例えば下の歯が抜けた場合でいえば反対側の上の歯が伸びてきて、咬合平面と呼ばれる、歯をかみ合わせた時に上下の歯が接する平面が段違いになります。
カチッとまっすぐに噛む分には問題がなくても、顎はただ上下にかみ合わせるだけではなく左右にグラインドする動きも自然にしているため、その時に引っかかって、顎関節に悪い影響を与える可能性が非常に高くなります。
歯が抜けてしまった時にはインプラントやブリッジなどでできるだけ早いうちに歯の失われた部分を補うことが基本ですが、歯並びやかみ合わせが悪い状態で無理やり入れてしまうと予後が悪いので、そのような場合には矯正治療を取り入れることでより良好な結果に繋がります。
詰めものや被せものが合っていない時には
むし歯治療の後に入れた詰めものや被せものなどの補綴物が合っていないということによるかみ合わせの不良も多く見られます。
適合していない補綴物は基本的には取らなければなりませんが、実はそのような不適合が1本の歯で起こる可能性は低く、不良な補綴物が複数入っていることで全体的なかみ合わせの悪さに繋がるケースの方がずっと多くなります。
その状態からかみ合わせの改善を図る場合には、まずは顎がリラックスした状態でもっとも自然にかみ合う位置を調べ直した上で、全ての補綴物をやり替える方法がベストといえます。
そもそもむし歯は一気に複数の箇所にできて治療をするものではなく、一本できては治して、また新しく一本できては治して、ということの繰り返しです。
良いかみ合わせの状態で一気に治すことができれば問題ないのですが、一本ずつパッチワークのように治していく方法では本来自分が噛みたいところで治すことは難しいものです。
一箇所だけではなく全てやり替えた方が患者さまにとってメリットが大きいと考えられる場合には、正直にその旨をお伝えして、予算や治療期間などの兼ね合いも考慮しながら最善の方法を一緒に考えていきます。
歯ぎしりによる歯の摩耗
歯ぎしりによる歯の摩耗でかみ合わせに問題が生じている時には、マウスピースを使った治療を行うことで、「朝起きたら歯が痛い」という状況をまずは脱することができます。
マウスピースを入れることによって、歯の根の周りにある歯根膜のセンサーから脳に送られる信号が極端に少なくなるので、無理やり噛ませていたそれまでのかみ合わせの情報が届かなくなり、噛む筋肉がリラックスして本来のかみ合わせに近づくことが考えられます。
そのためマウスピースを使っていると下顎が下がるような咬合に変化しやすく、不正咬合の段階も変わってきます。
場合によっては全ての歯がオープンバイト(上下がかみ合わずに開いている状態)になり、矯正治療が必要になるケースもあります。
マウスピースを提供しているクリニックは多数ありますが、矯正やかみ合わせの専門的な教育を受けていない一般歯科の歯科医師では、マウスピースを使ったために本来のかみ合わせが現れて驚くということがよく起こります。
かみ合わせ・矯正の専門の医師と連携することのメリット
当院は矯正専門歯科である浅見矯正歯科クリニックとの強固な連携を治療に最大限活かしています。
かつては全ての歯が揃っていなければ矯正治療を受けられませんでしたが、現在では一部の歯が欠損していても矯正が可能になりました。
そのような場合に、ある程度かみ合わせを整えてから補綴治療をした方が良い結果に繋がることが期待でき、また矯正治療が終わってから補綴治療を行う際にも、隣り合った医院で治療を受けることで、二重に検査を受けて改めて口内全体の状況を調べ直す過程が不要になります。
矯正の治療を受けながら次の段階の治療の計画を立てていけるのでスピーディに治療を進められ、数か月から半年ほどの時間の節約や、余分な検査を受けずに済むことによる費用の節約にも繋がり、患者さまにとってのメリットが大きくなります。
治療にあたって行われるさまざまな機能検査
当院では浅見矯正歯科クリニックとの連携もあり、他院では見られない特殊な計測機器を多数備えています。
例えば下顎がどのように動いていたかという軌跡を調べる検査や、筋電図による顎周辺の筋肉の強さの測定、舌の位置や唇の筋肉の締まる強さを測る検査、舌圧や頬の圧力の測定など、さまざまな機能検査を厳密に行うことによって、どこに歯を並べればいいのか、どのようなかみ合わせを作るべきかという情報が豊富に得られます。
そのような情報を揃えた上で詳しい結果を元に治療をした場合と、全く情報を得ずに手探りの状態で治療をした場合では、状況によっては仕上がりが180度変わってくるといえます。